ピアニスト/作編曲家の飯田俊明 氏より、ソロ・ストリングス音源「CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS」のレビューを頂きました!

クラシカルクロスオーバーを軸に多彩なジャンルで活動を行うピアニスト/作編曲家、飯田俊明 氏。CINEMATIC STRINGS 製品を普段から愛用されている氏より、ソロ・ストリングス音源「CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS」のレビューを頂きました!


「CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS」レビュー by 飯田俊明 氏

弦楽器のソロは、生楽器のシミュレート系音源においてほぼ最後の難関と言って良い。

弦楽器は最も表現力の幅が広い楽器の一つ。ストリングスセクションの場合はなんとかできても、例えばヴァイオリンソロ音源で生と聴き違えるようなレベルの音源はなかなか存在しなかった。ただ最近モデリングの技術を使った音源が出始めるなど、ようやく面白くなってきた分野である。モデリング技術は演奏への反応が良いが、音質そのものはサンプリングの方が有利な傾向も感じられ、一長一短の様相を見せている。

そんな中、従来のサンプリング手法の最右翼の一つが、このCinematic Studio Solo Strings(以下CSSS)である。

一番の印象は、時間をかけて非常に丁寧に録られているな、ということ。

ヴァイオリンは表現力の自由度が高い分不安定な楽器でもあり、粒の揃ったサンプリングが難しいが、安定してプレイできるようサンプリングされており使いやすい。音質はナチュラルなハイファイサウンド、奏者も一流でこのメーカーらしく非常に美しい。インターフェースはCinematic Studio Strings(以下CSS)と共通でわかりやすく、基本的な操作ではマニュアルはほとんど必要ない。

アーティキュレーション(奏法)は大きく8つに分けられている。

8つのアーティキュレーションボタンを選択すると、それぞれに必要なパラメーターだけが右側にポップアップで出てくる仕組み。そのおかげで、とてもシンプルなデザインになっている。ロングトーン系で必要なEnvelopeは、ポップアップされる奏法ごとに独立設定になっている。他にも、トリルは半音または全音を押さえることでトリルの音程幅を指定する形になっていたり、ショートノートは60ms 前倒しすることでクリックにぴったり合うよう統一されていたり、キースイッチは単にスイッチとしてではなくヴェロシティが反映され、例えばピッチカートのキースイッチを叩く強さによって、バルトークピッチやコル・レーニョに変化したりと細かく行き届いた構成で、よく整理されている。

もう一点、キースイッチだけではなく、CC58だけで19種全ての奏法&ヴァリエーションを切り替えられるのもありがたい(CCナンバーは変更可能)。

鍵盤を使うキースイッチは、奏法変更のインターフェースとしては使いやすいが、ノートデータを流用しているため、トランスポーズの影響を受けたりといったいくつかの問題がある。モジュレーションホイールのようなコンティニュアス系のモジュレーターでリアルタイム演奏できるほど自由にコントロールするのは難しいが、なんらかの工夫によってCC58をスイッチング出力できれば、利便性はそのままに、キースイッチの厄介な問題を解決することができる。

iPad(iPhone)のTouch OSCなどや、サンプラーパッドなどを使う方法もあるだろう。筆者の場合は、マスターキーボードのプログラムチェンジボタンを使い、Logic Pro X のエンバイロメントウインドウのクリックポート上でトランスフォーマー(変換器)を介してプログラムチェンジをCC58に変換している。

8つのアーティキュレーションの中で、最も気に入ったのがStaccatoである。

Staccatoは、モジュレーションホイールを使って、長さの異なる4種のStaccatoを使い分けることができるが、この中で一番長いsfzだけはビブラートのかかったサンプルとなっている。これはヴァイオリンフレーズのありようを考えるとなかなかの英断で、例えばクラシックの作曲家クライスラーの「美しきロスマリン」のような軽やかなフレーズも表現しやすい。データ編集などで追い込めば、これまでにないリアリティーを実現できる。またこの切り替えも、表示部分をControl+クリックすることで、MIDI learn 方式で自由に割り当てを変更できる。

Sustainの中にはLegatoモードもあり、ダイナミクスは3段階。クロスフェードも可能だ。(この音源ではVelocity X-fadeと呼ばれている)

サンプリング音源は、歌わせるような表現を求める時に避けて通れない問題がある。それはサンプルの単音を延ばしながらダイナミクスをクロスフェードをすると、音が2つ聴こえてしまう、ということである。あるいはビブラートをクロスフェードでコントロールしようとする時も同様だ。これらの問題はストリングスセクションでは気にならないが、ソロでは避けられない。この音源もそれから逃れることはできないが、ピッチなどが安定して録られているため、問題は最小限にとどまっている。もちろんダイナミクス変化にクロスフェードを使わなければ、問題はない。

Measured Tremという他にはない奏法があるのも珍しい。テンポに同期でき、一度弾くと非常に短い同音2音連続のStaccatoサンプルが発音される。これはダウン&アップボウイングで録られているようで、テンポに合わせたトレモロや、同音連打のフレーズで使え、速い曲では弓を激しく動かした、よりリアルな疾走感が感じられる。

con sordino(ミュート)はサンプリングではなく、IRのエミュレーションのようだ。音質だけを考えれば、サンプリングするに越したことはないが、エミュレーションを使うことで、データの統一性を保つことができる。これなら制作途中でミュートを使いたくなった時、データを細かく修正しなければならない、という事もない。

この音源の魅力的な使い方の一つに、CSSとのレイヤーがある。

ストリングスセクションのサンプリング音源では、セクションごとサンプリングするため、個々の弦の集まり、というよりはまとまった一つの楽器として聴こえがちで、またフレージングによっては、芯がはっきりしない場合があり、ともすればレガートサンプルがあってもパッドに近いニュアンスで聴こえてしまう。

CSSSはCSSとのレイヤーを前提に作られており、スタジオももちろん同じで、サウンドがとても良く馴染む。

ストリングスにソロ弦を混ぜる手法は珍しいことではないが、この2つはシーケンスデータに対する反応も同様で、そのためソロ用に別のデータを用意する必要がない(もちろん個別にコントロールしてバラけさせ、よりリアルに聴かせる、という考え方はあるにしても)。レイヤーの効果は、CSSS側のバランスを上げた時に特に顕著で、同じ音量では馴染みすぎて、混ぜていることがわからなくなるほどだが、CSSSの音量をあげていくと、よりリアルに、また人数の少ない弦セクションのニュアンスが出てきて、その意味でも効果的だ。ロングノートのクロスフェードによる重複も、この使用法では問題にならない。

まとめ

CSSSは、サンプリングという従来の手法を使っているという意味で、完全な演奏上の自由度を持っているわけではないが、「丁寧なサンプリング」と「考えられた構成」という正攻法のアプローチを推し進めることで、サンプリング方式でしか得られない音のクオリティを保持しながら、ハイレヴェルなコントロール感をもたらしている。

個人的にはストリングスセクションを扱うことが多いので、CSSに混ぜて芯を出す手法に特に魅力を感じる。CSSはビブラートが美しく、使えば使うほど良さのわかる音源だが、2つをレイヤーしたサウンドは、リアルで美しいストリングスを求められる制作で、メインストリングスとして使っていけるかもしれない、と考えている。

 


飯田俊明 氏

クラシカルクロスオーバーを軸に、多彩なジャンルで活動を行うピアニスト、作編曲家。

ドビュッシー、ラヴェルなどに影響を受け作曲を始める。武蔵野音大大学院ピアノ科を修了し、PTNAコンペティションDuo特級最優秀賞受賞。その後、スタジオ・イオン専属として制作活動を始める。

現在まで、二期会、劇団四季、宝塚歌劇団出身のヴォーカリストや、岡本知高、平原綾香、ミネハハ、エスコルタ、中島啓江、元ナナムジカボーカル梢、ジャズの北浪良佳、インストでは、オカリナのホンヤミカコ、タンゴの喜多直毅、環境音楽ではドコモ携帯のサウンドデザインを担当した小久保隆などを演奏・作編曲でサポート。50枚以上のCD制作や、ライブ、TV(NHK、CM他)、映画、ゲーム、またアクアパーク品川(メリーゴーランド他)、六本木ヒルズ時報、万博パビリオンなどの施設に作品提供。

最近の活動には、NHKドラマ「ダルマさんが笑った」主題歌作編曲、ミュージカル田代万里生DVD音楽監督、安藤美姫アイスショー音楽アレンジ、ゲームAMNESIA音楽フルオーケストラアレンジ、岡本知高&サラ・オレインのデュエットアレンジ、春野寿美礼ニューアルバムアレンジ、松平定知らアナウンサーとの朗読コンサート、NHK BSドラマ「クロスロード」アレンジなどがある。

演奏力を元に、有機的な表現力を持った打ち込みアレンジが評価され、活動の場を広げている。

 


CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS
奥深い表現力が魅力的なソロ・ストリングス音源!

税込価格:¥31,860
(価格は為替によって日々変動します。)