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[VOCALOID2情報]巡音ルカに関しまして

2009年2月3日 23:20 by wat

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皆様、いつもお世話になっております。また大変ご無沙汰して申し訳ありません。クリプトン、VOCALOID開発担当のwatです。

ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。この度、私共がVOCALOID2エンジンをお借りして、音声データーベースを中心に企画制作させて頂きした、VOCALOD2 キャラクターボーカルシリーズ03「巡音ルカ」を1/30にリリースする事が出来ました。これは第一に、CV01から、CV02、CV03までを応援して頂いた皆様のお力添えあっての事です。ありがとうございます。

今回、私共ははじめて英語版データベースの制作に着手した訳ですが、英語版の音声収録は非常に単調かつ試験的な作業の連続でした。そんな慣れない収録現場に、長時間お付き合い頂き、一貫して素敵な声を提供して頂いた浅川悠さん。イラストでは、少々無理強い感のあったキャラクターのディテール、デザインのオーダーを引き受けていただいたKEIさん。お二方にこの場を借りて、深くお礼申し上げます。ありがとうございました。

また、手前味噌となりますが、VOCALOID開発内では約8ヶ月の間、英語版のディレクションを担当し、英語に関するブ厚い資料の制作から、音素と波形の調査/調整を行ってくれたS君。最大で5〜7つの元波形から干渉を受ける発音、更に膨大なフレーズのパターンを探り、終わりの見えない波形のサンプル単位の調整、三半規管に堪えるノイズ除去との折り合いを毎日毎日繰り返し試行錯誤してくれたY君にこの場を借りて感謝いたします。

さて本日は、その巡音ルカのユーザー様に向け、機能面に関しまして下記3点のご報告をさせて頂きます。


1.巡音ルカ英語版用の追加辞書に関しまして

VOCALOIDには予め、共通の英語辞書というものが搭載されておりますが、これは数年前に製作されたものとなっておりまして、新語や流行語、また一部のよく使われる西洋語と略語、専門用語などが収録されておりません。そこで、今回は、弊社にて新しく追加辞書を制作させて頂きました。

また加えて、日本人のユーザー様に英語版VOCALOIDをお使いいただくにあたっての簡便さ向上のため、3桁の半角英数による基数詞入力(000、001〜020、030、040…100)、序数詞の入力(1st、2nd、3rd、4th…等)への対応を実現し、日本語に”近い”英語発音をする為の、ひらがな入力を可能とする辞書も加えております。また、ローマ字の末尾に半角英数字を加える事でニュアンスを切替える事も出来ます。追加された言葉の一覧、詳細に関しましては、追加辞書(.udcファイル)と一緒に同梱されているエクセルシートまたはPDFファイルをご覧下さい。

※英語版VOCALOIDではその仕様により、日本語の「ん」に準じる音を、単独で辞書登録する事は出来ません。「ん」を発音させたい場合は、音素記号入力時(歌詞入力時にAlt+↓で切り替え)に[n]もしくは[N]、[m]を入力してください。

※CV03「巡音ルカ」は、他の英語版VOCALOIDに比べて一部、音素の繋がりのパターンが増えております(合計約50種類)。その殆どが通常英語では使用されない繋がりですが、追加部分も踏まえて、辞書を制作しております。かな入力の一部など、他の英語版VOCALOID製品にて正常に発音されない可能性がありますが、ご了承下さい。

■ダウンロード・リンク

■使用方法

VOCALOID2プログラムをインストールしたプログラムファイル内のUDICフォルダ(※)の中に、上記よりダウンロード、解凍した中に含まれるadd_dic_090203.udcを入れて下さい。

・ダイアログどおりにCドライブにインストールした場合は、下記ディレクトリがUDICフォルダとなります(※)。

WindowsXP環境:

  • C:\Program Files\VOCALOID2\UDIC

WindowsVista環境:(ご利用環境によって変わります。)

  • C:\Program Files\VOCALOID2\UDIC
  • C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\VirtualStore\Program Files\VOCALOID2\UDIC

最後に、VOCALOID2 Editorの歌詞->ユーザー辞書を開き、User Dictionaryのプルダウンメニューからadd_dic_090203を選択してCloseボタンをクリックして閉じてください。

(※)追記:上記ディレクトリにUDICファルダが存在しない場合には、VOCALOID2 Editorの歌詞->ユーザー辞書を開き、User Dictionaryのプルダウンメニューからnewをクリックして、適当な名前を入力して新規辞書を作成。次に、Deleteボタンを押し新規辞書を削除してください。Closeボタンをクリックして閉じると操作完了です。この操作でUDICファルダがC:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\VirtualStore\Program Files\VOCALOID2\の中に作成されます。なお、上記で解決がなされない場合には環境固有の問題の可能性もありますので、お手数ですが弊社サポート(mpsupport@crypton.co.jp)までご連絡いただければと思います。

■追加辞書の今後の展開について

追加辞書に関しましては、今後も多数の単語を追加していく予定です。辞書の内容に関するご意見、ご感想、追加希望の単語などが御座いましたら、お手数ではありますが、弊社サポートアドレス(mpsupport@crypton.co.jp)までご連絡いただければ幸いです。内容を確認させて頂いた上で、是非、参考にさせて頂ければと思います。また、追加辞書が更新された場合には本ブログにてご連絡させて頂きます。

2.ブレス発音[br5]の使用法に関しまして

CV03「巡音ルカ」の英語版データベースでは、試験的な試みと致しまして[br5]を短い休符(無音)として使用する事が出来ます。使用用途としては[d]や、[t]などの子音で終わる単語の後に、音素の直接入力で[br5]を入れた音符([br5]の入った32〜64分音符)を挟み込み、母音から始る単語(例:air、andなど)が繋がる場面で、後続の母音の頭をはっきりと発音させたい場合等に有効です。

※日本語版でも英語版同様に[br5]を使用できます。英語版のような具体的な効果は有りませんが、宜しければお試し下さい。なお、上記[br5]の使用方法に付いて、他のVOCALOIDデータベースとの互換性はありませんのでご了承ください(公式サポート外の裏技扱いとなります)

3.子音[t]の使用法に関しまして

CV03「巡音ルカ」の英語版データベースは、英語版の仕様により、子音同士を連続させて発音可能となっております。今回、試験的な試みとして日本語版でも、子音[t]についてのみ、他の子音の前に配置できる仕様となっております。これにより、任意の場所に音素の直接入力で[t]を入れた音符([t]の入った32〜64分音符)を置くことで、擬似的な促音(小さな「っ」)の代わりのように使用したり、スタッカート気味のアクセントとして使用する事が可能です。

※本来の促音を再現するものではなく、あくまで擬似的効果となります。なお、他の日本語版VOCALOIDデータベースとの互換性はありませんのでご了承ください。なお、上記[t]の使用方法に付いて、他のVOCALOIDデータベースとの互換性はありませんのでご了承ください(公式サポート外の裏技扱いとなります)

以上、ご報告でした。

…2009年2月現在、まだまだサンプリングベースの歌声合成という技術は発展途上となっており、不完全な部分も在るかと思います。私共は私共のできる範囲で、その状況を進歩させる為、これから一層、大量の音声サンプルデータによる実験を試みたり、その整合性を高める為、収録〜編集に関する改善方法を模索したいと思います。

今後も、私共が制作した「VOCALOIDデータベース」、制作するデータベースに関しまして、皆様のご活動からも勉強させて頂き、より良い製品とサービスに繋げられるように努力させて頂ければと幸いです。何卒、宜しくお願い致します。