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「打ち込みに生命を吹き込む隠し味」 – “Godspeed/青木征洋”氏より、『CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS』のレビューをいただきました。

2017年10月4日 09:15 by T

新世代のプロデューサー、コンポーザー、ギタリストとして注目を集め、活動をグローバルに展開するGodspeed/青木征洋 氏より、奥深い表現力が魅力的なソロ・ストリングス音源『CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS』のレビューをいただきました!


CINEMATIC STUDIO SOLO STRINGS
REVIEW by Godspeed/青木征洋

前置きが5段落ほどあるので、細かい打ち込みのテクニックに興味が無い人は7段落目まで飛ばして下さい。

ストリングスを打ち込む際に注意すべきポイントは3つに絞られます。音の鳴り始め、音の繋ぎ目、そして音の終わりです。

生のストリングスの音に慣れている方なら直感的におわかり頂けると思うのですが音の鳴り始めについて、ピアノやギターのような速いアタックをストリングスに要求することは適切ではないケースがほとんどです。CC1(ダイナミクス)やCC11(エクスプレッション)を駆使して上手くアタックを遅らせてやる必要があります。

次に音の繋ぎ目。音を繋ぐのか切るのか繋ぐのか。弓を返すのか返さないのかの選択を迫られます。最近のライブラリではこのあたりを設定出来るものも増えてきたように思いますが、どこまで指板と弓の動きを想像出来るかが重要になります。

最後に音の終わり。スタッカートやスピッカートであればどれくらいの鋭さなのか。サステインであれば大体の場合デクレシェンドするかクレシェンドして音が終わります。一定の強さで伸ばしてスッと消える、なんてことはレアケースだと思います。この辺もキースイッチやMIDI CCを駆使して再現してやる必要があります。

と言った打ち込みのテクニックを用いてもどうしても解決出来ない問題があります。それは音の輪郭の欠如です。顕著に現れるのがレガートで音を繋ぐタイミングですね。セクションのライブラリは音の空気感、広がりを表現することに長けていますが音の芯を出すのには向いていません。

そこで出て来るのがこのCinematic Studio Solo Stringsです。(お待たせしました!)セクションの弦の打ち込みにこのCinematic Studio Solo Strings(以下CSSS)を重ねることで音の芯を与えることが出来るのです。そもそもそのような用途を想定して作られているというのも心強いポイントですね。

Cinematic Studio Stringsと重ねても良いですが、他のデベロッパーのストリングス・ライブラリと重ねても威力を発揮します。CSSSを使っていてありがたいなと思うポイントが、他のライブラリのために書いたカーブをCSSSのためにリプログラミングしなくてもそれなりに役割を果たしてくれることです。僕はメインのDAWがCubase Pro 9なのですが、メインのライブラリのMIDIリージョンのエイリアスをCSSSのMIDIトラックにコピペするだけで終わり、という状態にして使っています。

速いレガートでも鋭いスタッカートでも問題なく追従してくれますし、サステインのビブラートのコントロールがきいたりマルカート、トレモロ、ピチカートといった奏法が一通り網羅されてるのもありがたいです。3種類のマイクポジションで収録されていますが、いい塩梅にミックスされたマイクも用意されており、First chairの用途として使うのであればそれで十分でしょう。体感ですが、マシン負荷もあまり感じません。

ソロ弦のライブラリで速いフレーズにも遅いパッセージにも対応出来て表現力もあり、打ち込み方が既存のセクション弦ライブラリと大差がなく、シネマティック用途を想定した音像で収録されたものって意外と穴だったように思います。普段打ち込みの弦に人間味が足りなくてトップだけ1〜2本生で録って重ねているような人には特に試して欲しいです。

 


Masahiro “Godspeed” Aoki (Producer / Composer / Guitarist)

プロデューサー・コンポーザー・ギタリスト・ViViX統括。東京大学工学部卒。

2005年にギターインストの流布を目的とした「G5 Project」を開始。4thアルバム「G5 2013」ではオリコンCDアルバムデイリーチャート8位にランクイン。

2008年にカプコンに入社し、戦国BASARAシリーズやロックマンXoverの音楽制作を担当。

2014年に同社を退社した後は自身の音楽レーベルViViXとしての活動を本格化させる一方でストリートファイターVの作曲を担当する等ゲームコンポーザーとしてもグローバルに存在をアピールしている。

2016年4月に新世代のギタリストプロジェクト「G.O.D.」としてリリースしたアルバム「G.O.D.111」の収録曲がKONAMIの音楽ゲームGITADORA Tri-Boostに収録されるなど、音楽ゲームにも活動の場を広げている。

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