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SPITFIRE AUDIO のシネマティック音源「COMPOSER TOOLKIT」 と「CHRYSALIS」の海外誌レビューをご紹介!(和訳あり)

2016年6月27日 10:50 by T

Future Music誌 2016年4月号(イギリス)に、アカデミー賞受賞作曲家によるコンポーザー・ツールキット「COMPOSER PACK」と、コンポーザーSAMUEL SIMによる劇判向けハープ音源「CHRYSALIS」のレビューが掲載されていましたのでご紹介します!(和訳)


Spitfire Audio社からリリースされた2つの最新ライブラリは、プロデューサーやコンポーザーに人気の、ディストーション・サウンドとワープ・ギター・テクスチャが収録されたレオ・エイブラハムズ氏の「ENIGMA」を引き継ぐものとしてデザインされました。

「ENIGMA」のようにデザインされましたが、オーラヴル・アルナルズ氏の「COMPOSER TOOLKIT」とサミュエル・シム氏の「CHRYSALIS」には、それぞれ個性が全く異なるサウンドが収録されています。

この2つのライブラリは個別で購入可能です。両製品とも動作環境においてはNIのKontakt 5のフルバージョンが必要です。ライブラリを購入後は、Spitfire Audio社の自社製ダウンロードアプリからライブラリのダウンロードが可能になります。ダウンロードが完了したら、Kontaktを起動すればもうライブラリは使用可能です。ライブラリを解凍する際、「CHRYSALIS」はハードドライブに15.86GBの、「COMPOSER PACK」は15.22GBの空き容量を必要とします。

 

「COMPOSER PACK」

オーラヴル・アルナルズ氏の「COMPOSER PACK」はフェルトグランドピアノをサウンドソースの基本としていますが、他にも色々なサウンドソースが収録されています。メインのフェルトグランドピアノのサウンドは2種類のメインパッチから演奏できます。この2種類の“Mixed” では、ピアノソースを幻想的な、そして繊細なパッドでブレンドすることができます。加えて個別のマイクチャンネルもあり、個別で使用したり、各マイクチャンネルをブレンドすることができます。

コンポーザーは、このインストルメントに入り込む “入場料” を支払うだけの価値があります。コンポーザーはこの2つのインストルメントの魅力的な演奏性によって何時間もの時間を失うでしょう。しかし「COMPOSER PACK」に収録されている他のフォルダも探検する価値があります。ここではサウンドが各カテゴリに分けて整理されています。

「Organic Warps」フォルダにはパッドが収録されています。その空気感やテクスチャは他のインストルメントのバックで、繊細な、そしてリッチな音をレイヤーするようデザインされています。楽曲に厚みを出したい時にはピッタリです。

「Synth Embellishments」フォルダは更にその上を行きます。充分過ぎるほどのリッチなパッドとインストルメントが収録されています。ペダルやエフェクトで加工されたアナログシンセの埃っぽい歪みサウンドは、このコレクションに強烈なキャラクター性を与えています。

「Tempo Locked」フォルダにもまた、とても便利なソースが収録されています(もし楽曲が少し薄ければ)。収録のシークエンスとリズムを楽曲のテンポに設定すれば、この非常に演奏性の高いパッチで心地良いリズムのアレンジメントも、ちょっと忙しいアレンジメントも自由自在に演出可能です。

 

「CHRYSALIS」

Spitfire Audio社からリリースされたもう一方の新製品「CHRYSALIS」は、コンポーザーであるサミュエル・シム氏によるハープ・ライブラリです。さきほど紹介したオーラヴル・アルナルズ氏の「COMPOSER PACK」と同様に、マルチサンプルのメインサウンドは、「CHRYSALIS」ライブラリの1つのフォルダからロードできます。そのフォルダの名前は「Initial Pupae」です。様々な種類のハープのアーティキュレーションが用意されており、幅広い、ミックス可能のマイクソースのコレクションで録音されました。

下記で紹介するフォルダには、様々なプロセッサーとテクニックによって加工した、実験的でエッジの効いたハープサウンドが収録されています。

「Nympha Pedals」フォルダには、ハープを一連のギターエフェクターとMarshall JCM800アンプを通してレコーティングしたパッチがあります。これらの前衛的なレコーディングは、パッド、テクスチャ、そして創作性を掻き立てる、演奏性の高いプログラムへとそれぞれ収録されました。

「Metamorphosis Warps」フォルダでは、オリジナルサウンドと、創られたサウンドがペアになっている23個のサウンドソースが収録されており、スライダーによってオリジナルのサウンドをストレートからワープに変えることができます。

最後になりますが、「Cocoonase」フォルダにはシルクのようなスムーズなサウンドが収録されています。様々なテクスチャ、アンビエンス、パッドが惜しみなく収録されており、「Metamorphosis Warps」フォルダ同様、ツインスライダーでサウンドのバランスを調節することが可能です。

「CHRYSALIS」のGUIは「COMPOSER PACK」とは異なりますが、両ライブラリにはEQ、Lo-Fi、フィルタリング、コーラス、リバーブ、ディストーション、フェージング等の内部エフェクトが豊富に用意されています。

 

コンポーザー用のライブラリ?

両ライブラリはコンポーザーのためだけのライブラリでしょうか。それともEDMやポッププロデューサーも使用できるライブラリでしょうか? 間違えなく後者です。

両コレクションの嬉しいところは、コンポーザーが求めていることに直ちに対応し、頭に描いた想像通りのサウンドを得られるというところです。素晴らしいミキサーです。

制作中の楽曲に何かしらのテイストを与えたいと思ったら、あなたはおそらく、楽曲にもう少しの厚つみや雰囲気を求めているのでしょう。今までお使いのパッドとアンビエンスをこのライブラリも置き換えれば、楽曲にあなたが求めている深みを与えることができます。同時に楽曲のステレオイメージを広くし、作品をより洗練させることができます。

何か言い訳でもありますか?上記ライブラリの内容を見れば何もないでしょう。しかしもしもっとワガママな意見があるとすれば、「COMPOSER PACK」はもっと気前よくサウンドを増やしてくれても良かったと思います。例えば「Tempo Locked」フォルダには5つのパッチしか入っていません。もちろん全て美しいサウンドなのですが。しかしこれはあくまでもマイナーな批評であって、両ライブラリには素晴らしい演奏性が備わっており、各パッチは音楽のアイディアを掻き立てます。コンポーザーのミュージックスタイルに関係なく、もしあなたが「ENIGMA」が好きなら、このライブラリも気に入ることでしょう。

 

総評

抗えないほどの優美な魅力
プラス点:コンポーザーとプロデューサーへの高い活用性
マイナス点:「COMPOSER PACK」の収録サウンドの数