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[VOCALOID回想]初音ミク企画前の話と、関連企画の経緯(長文注意!)

2009年7月6日 18:57 by wat

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こんにちわ、wat@blogリハビリ中です。

今回は先日予告させていただいたとおり、キャラクターボーカルシリーズ第1弾であった「初音ミク」の昔話から関連付けて諸々のお話をさせて頂ければと思います。

「何故、今、また初音ミクなのか?」と疑問に思われる方も多いと思いますが今後順を追って説明しますね。まず、きっかけは、ここ最近の3ヶ月くらいに渡って藤田咲さんとスタジオでご一緒させて頂く機会が多くあり、「初音ミク」の収録当時のお話や、藤田さんと初音ミクの”声”の話など、取り留めなく色々なことを振り返る事ができました。

自分は結構小心者なので、初音ミクを発表した当初から現在まで、彼女や彼女のファンの心境などが気になっていたのですが、ざっくばらんにお話が出来た事で、今まで以上に前向きに今後について考えられる気がしております。(余談ですが、Meikoさんも同じくお話ができて良かったと感じたことがあります)

今回は「今後の話」そのものには触れませんが、その前段としてお話させていただければ幸いです。

それでは暫し、昔話にお付き合い下さいませ・・・(先に謝りますが、ものっ凄い長文です。すいません)

■初音ミクの前の話”〜2006年”

まず、クリプトンという会社は北海道の札幌市にあります、この業種ではちょっぴり特殊です。他の音楽制作用ソフトウェアを販売している会社の多くは関東〜関西にあります、これはまあ良くある話ですね。関東の会社であれば、ソフトを売るために店舗に毎日のように営業に行ったり、店頭でセミナーを開催したりして地盤を固めることを行うのですが、弊社は札幌ということもあってその辺は少々弱かったりします(その辺りは流通の会社様と一緒に調整しております)。

逆に、自社サイトでの商品を属性(音楽ジャンル・使用楽器etc)ごとに検索する機能や、月に数枚しか売れないニッチな商品で、店舗では在庫リスクの高い製品を上手く管理し、直販で必要な人のところに届けたりする事など、アイディア面では、工夫凝らしてニーズに合わせた展開できていたと思います。

・・・VOCALOIDで言えばカイトの名前募集をしていた頃の、2006年初頭。「口コミマーケティングが〜」とか「ブロガーの間で話題の〜」とか散々耳にするようになっていた状況下(当時の社内掲示板では、弊社代表が躍起になってその手のニュースを書き込んでいました…)、弊社では月に何枚も音楽素材や、ソフト音源がリリースされており、プレスリリースを出しても、商品点数が多すぎて周知徹底できなかったり、雑誌の発行ペースと合わなかったりといったジレンマを抱えておりました。その解決方法として「いっそ毎日ブログでサンプル音源を聞いてもらいつつユーザーに解説したり、場合によって音源サンプルを提供してもらって使用感をコメントなどで貰った方が良いんじゃないか?」という事で、試験的にブログをはじめたのが、本ブログの始まりです。この転換が無ければ、商材へのアプローチ方法・・・初音ミクのリリースまでの手法もどうなっていたか分かりません。

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ブログが定着するまでの約1年間は、クリプトンのWEBサイトリニューアル準備だったり、オーケストラ音源やドラム音源といった主力製品のリリースラッシュがあったりと、そちらにマンパワーをとられ、私はVOCALOIDのような製品の新規ライブラリ開発は行っておりませんでした、思えば適度に忙しいけれど平和なときを過ごしていましたね・・・(遠い目)

※ちなみに新規開発を行っていなかったのは、KAITOリリースから程なく担当者が退職したという理由もあります。

そんな中、VOCALOID関連のターニングポイントが訪れます。2006年の10月25日14時半、ヤマハサウンドテクノロジー開発センターの剣持さん来社されVOCALOID2
のデモンストレーションと打ち合わせが行われたのです。真っ黒なVOCALOID画面に関するデザイナーの拘りをお聞かせ頂いたり、簡素化されたGUIに関する質問などを繰り返しながら、日本人女性のVOCALOID2βと、外国人女性のVOCALOID2βを聞かせて頂きました。その声質がクリアなことと、今も歴史のハザマにある”マル秘デモソング”のオーケストラのオケが、今でも記憶に残っています。

しかし、ここから直ぐにDB開発をはじめた訳ではなく、「誰かが来年、がっちりVOCALOID2の担当にならなければならないな・・・」位の印象でした。
(完全な余談ですが、打ち合わせの日の夜に、剣持さんが物凄いコアなヨーロッパビールオタクだということを知りアルコール好きとして感銘を受けました。)

■初音ミクまでの話〜実はCVシリーズの姉妹企画だった、まぜ生まで〜

2007年に入り、転機が続々とやってきます。まずは、下記の記事です。

・ヤマハがNAMM SHOW 2007で発表する新製品をお披露目

↑当時はVOCALOID2もう出来たのか!!という感想でしたが、今見てびっくりなのは、はてなブックマークの少なさ!!これが次期VOCALOIDなら何百倍で済まないんでしょうね・・・改めて、当時はまだ嵐が来ることを誰も感じていなかったとい事でしょう。

さてこの発表がなされている頃、クリプトンでは社員の移動が進み、また新規企画の話が持ち上がります。そして、これが後の「初音ミク」というかキャラクターボーカルシリーズに影響を及ぼす事になります。。。下記、時系列にポイントを挙げます。

2007年1月下旬
・携帯部門に、企画見習い(現:携帯サイト担当社員)が入りました。
携帯サイトがらみの部分で、ダンスミュージックの着メロ〜着うたサイトが伸び悩みになったいた事、更に社員の入退社などが有り、今までと違った新しい企画を求められていた時期でした。そこでテコ入れの一環として(社長曰くオタク受けする)ライトオタクな女性が入ってきたのです(主に集英社コンテンツを好みます)。まあ、別に触れては成らないほどのコアなサブカル・マニアクスな男性社員というのも同時期に入っていて、美味な有毒物質(魚貝の肝〜)について語り有ったりと、こちらの方が濃度が高いのですが余りボカロの企画では関連有りませんでした。(あ、彼からセンチネルの設定資料集を借りっぱなしだ…ヤバイ)※彼はもう退社されております。

2007年2月上旬
・ボカロの開発準備が始まりました。
結局、弊社で開発準備が始まったのは2007年の2月。担当は基本的に自分ひとりで後から必要な人数を揃えようと言う段取りで始まりました(後にアルバイトが補佐として参加してくれました)。環境的に静寂が求められるVOCALOID作りは、それまでのメディアファージの座席では中々無理だったので、倉庫の奥に開発用のエリアを確保したりしてました。そのタイミングでは、まだ、企画内容に関して悶々としました。

自分は90年代初頭のJAZZYなクラブミュージック〜マニアックな渋谷系までは聴いていて、例えば設立当初のエイベックス・トラックスは、後期アシッドジャズである、DORADOとMOWAXの代理店をやっている会社だと思っていたくらいでした。J-POPも勿論、凄くメジャーなものは耳に入っていましたけれど、余り日本人ボーカルの音源を聴いていなかったので、一通りレンタルCD屋で聴きなおしてみて立ち返ったことも有ります。
ただ、聴き直しても、聴き直しても、悲しい性で、「マンディ満ちるさんやUAの声カッコいいよな」とか「朝日美穂さんの声可愛いよな」とか、「ポート・オブ・ノーツの畠山さんの声、美しいよね」とか偏った趣向から離れることは出来なくて、自分の好きな声の傾向を再認識するばかり。さらに、上記の魅力的な女性シンガーに熱血体当たりをしてVOCALOIDにしてみたいという気も全く起きず(逆に違和感を覚える始末)。。。

ただ、1点、これは今言って失礼にならなければ良いのですが、Spiritual Vibesというバンドの女性VOCALのkikuさんという女性シンガーがいらっしゃって、彼女の声が冷ややかで神秘的で子供っぽい感触で、大好きで、、、人間的な要素を抑えた無垢な歌声は、重力に反してフワフワたゆたうようで(以下ラブレター略)、、、彼女や周辺の音楽シーンを知ったのは、高校生自分のとき”思春期の衝撃”だったので、今も色あせない音の記憶として自分の頭の中を回っています。mikuさんと一文字違いなのは偶然ということにしておいて下さいませ。そのつながりで、個人的な思いとして、無垢な子供の声のボーカロイドを、作りたい、作りたい、作りたいと思うことは今もあります。禁断症状です。

2007年2月下旬〜
・企画の連結。
ここでようやく正気に戻って、携帯サイト「まぜてよ生ボイス」と「キャラクターボーカルシリーズ」の話になります。別々の企画として動いていた携帯サイトの企画とボカロ企画ですが、ざっくり言ってしまうと2つ合わせて、声優事務所に営業をかけかた方が良いという話となり(ボカロのオファー・説明だけだと説明が現実離れしていて、ドン引きされる傾向がありましたので・・・汗)、諸々をシミュレーションた上での結論です。

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ちなみに「まぜてよ生ボイス」とは、2007年7月に開始した携帯向けの無料サイトサービスで、主に声優のワンフレーズボイスを集めたサイトです。
キャラクターボーカルシリーズと同じ声優さまもおりますが、流石まんま被っていたらバレバレなので、CV03だけは故意に切り離しました(汗)

そんな中で、VOCALOIDの場合を考えても、ボイスサイトの場合を考えてもアーツビジョンさんは最適ということで落ち着いたわけです。この頃の重要な企画会議で(有名男性)声優の良さを熱く語り、社長を押し切ったのが、先日の弊社代表インタビュー
でも出てきた女性社員(当時アルバイト)でありまして。。。今振り返っても有無を言わさぬ良いプッシュだったなと(笑)。歴史の影に○女子あり。といった所でしょうか・・・。

彼女はその後、「初音ミク」面では、シンセサイザーのモチーフを入れ込むのに私がズタズタに切り裂いたキーボードマガジン2002年4月号を、KEIさんへのデザイン指示書にまとめたり。収録を補佐してくれたり、コミケに出展したいと言い出したり(これは違うかな?)、色々と要所で手伝ってくれました。本当に感謝です。
また、実は次のシリーズ…という所でも、”訳合って”彼女と一緒に都内で動いています。そのうちお話できるタイミングが来ると思いますので、ご期待下さい。

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※2007/7/20午後10時過ぎ:同月19日にまぜ生がオープンした際の、打ち上げ帰り。敏腕女性社員こと「わっしょいさん」ご満悦の表情。飲みの後、ゲーセンに立ち寄った際に、私がゲットしプレゼントした「おにぎり」を大事そうに抱えております。ちなみに、わっしょいは高校時代からのあだ名だそうで、自己紹介の時に「わっしょいって呼んでください!」と言われます。。。※本人に掲載許可は頂いております。

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最後に宣伝ですが、、、初音ミク誕生秘話の影(?)の功労者でもある、彼女。そんな彼女が初めて責任者として担当する、新しい携帯サイト「まぜてよ生ボイス」公式サイト版が、本日オープン致しました(パチパチパチ)。au版は9日、SoftBank版は15日開始だそうです。ミク誕生の裏話まで気になる方、この長文を最後まで読んでしまった方は、(メディアファージとは関係なさ過ぎますが(汗))是非、彼女の仕事振りを覗いてやってくださいませ。

PS(編集後記)

それにしても社長の振りは絶妙(天然)すぎる・・・。BCNの中の人に、”初音ミク”と”まぜ生”の話を同時して、”まぜ生”部分は絶妙にカットとなり、意味深に彼女(わっしょい)を引っ張り上げさせるなど、このタイミングで上手く矛先を”まぜ生”に向けるとは・・・会員増えるといいね、わっしょい・・・お陰で顔写真の公開まで彼女は観念してしまいました(笑)。これで某クリ☆ケンに続き、クリプトンで顔出しする仲間が殖えました。今後ともVOCALOID開発と愉快な仲間達を宜しくお願いいたしますm(_ _)m

さて、次回は、今週末VOCALOID収録で都内に出張した際にでもエントリーしますね・・・

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