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[新作情報] 総合ベース音源『Abstrakt Bass』紹介〜前編〜

2006年9月26日 19:00 by wat

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突出した技術力、サウンドデザイン能力が、各所で高い評価を得ているSoniccouture社。今回は、以前に一度ご紹介していた同社の新作『Abstrakt Bass』の内容をお伝えしたいと思います。かなり長文ですが、(しかも後編に続きますが)PCMのベース音源の可能性を超えようとする果敢なアプローチ満載の同製品。ご注目頂ければ幸いです。

本作は、KONTAKT2の機能性を活かした、一歩進んだ”総合ベース音源”と呼べる充実の内容。収録楽器は、大量の名機によるシンセベースと、各種奏法によるエレクトリックベース&アップライト・ベースを収録、更に厳選されたフィルターバンクなどを使っています。内容面では、24bitの解像度、総容量約1.6GBに、140種類のパッチを収録し、4種類のKSP(KONTAKT2用Soniccouture製カスタムプログラム)と、1種類のベース専用KSPを搭載。全パッチにカスタム・GUI&パラメーターが適用されている仕様です。※KSPによって特に作りこまれているのがサウンドの”揺らぎ”。低周波のサウンドのミソである、”心地よい、周期的な低音の波”までもが細かくデザインされています。

さてココから、本製品の”一歩進んでいる”所以を解説します。本製品は7つの音色カテゴリーを持っており、その全てがコンセプチュアルに”総合ベース音源”を形成します。例えば”純粋な基本波形”から、”複雑な応用音色”(作りこまれたFMとVAの複合音色)にまで対応するのです。

【Abstrakt Bassのサウンドカテゴリー】

1.斬新な「エレクトリック&アコースティックベース・カテゴリー」
…「VARI-AMP sampling」技術を使用し、D.I., CloseMic, Distant Micによるそれぞれの音色をミキシングが可能な複数のメインパッチ。まるでEZ drummerの様に簡単に空気感を調整できるエレクトリック・ベースです。当然、他の空気感を調整可能なドラム音源との相性は、最高。また他にも、レゲエ/ダブ専用にカスタマイズされたプログラムも複数用意されており、頭蓋骨を突き抜ける、低音の”鳴り”が強烈です。※同社のドラムライブラリ『VARIABLE AMBIENCE DRUMS』との併用にも最適です。

2.“無限の音作り”が堪能できるピュアな「シンセ波形・カテゴリー」
…ビンテージ・シンセ等から取り出した、オシレーター波形そのままを抜き出したサウンド、または波形デザインによるサウンドを収録。当然、KONTAKT2の強力なシンセシスによる音作りを「前提に」考えられております。様々な名曲で使われた”AKAI Sシリーズ”にプリセットされているSIN波よろしく、あらゆるシンプルなベースラインを生成するのに役立つでしょう。(※SINE波そのものは少なく、SAWをフィルターで削っていく事で、SINE波的なサウンドバリエーションを出す仕様です。)

3.超低音をつかさどる「サブベース・カテゴリー」
…どっしりと低域を支える為の、超低音を唸らせるサウンドを集めました。これは、言葉では伝え難いのですが、本当に強烈です。ベースサウンドに使用するのは勿論、バスドラムに被せて(同じタイミングで)鳴らす事で、強靭な”低音の塊”とも言える低音ドラムサウンドを作ることが可能です。

4.人気ビンテージ・シンセの象徴的サウンドを集めた「シンセ・クラシック・カテゴリー」
…これはタダのアナログシンセの寄せ集めではありません。Jupiter8、MINI MOOGといった定番所はもちろん、レゲエで使われるSH-101や、CS-01。マイアミベースやD&Bで使われる、TR-808に音程を付けたベース。更にセミビンテージ・シンセとしてAlpha JUNOや、変わり所ではHouse Organや、Rhodes Pianoの低音部も収録。他のカテゴリーと、ユニゾンにより「懐かしいけど新しい」サウンドをクリエイト出来ます。

5.強烈なインパクトを持った「ディストーション&ドラマ・カテゴリー」
…ハードコアなD&Bやブレイクコアに対応するディストーションベース(下品では無く、あくまでソリッドな印象)。先鋭的なトランス/テクノに対応する、高音圧ベース(ジリジリと震える、倍音が独創的)。凶悪なエレクトロニカに最適なブロークン・ベース(アタック感があり、爆音ドラムにも対応)まで、新しいスタイルのクラブミュージックに最適なベースサウンドをデザインしたのもです。※同社のドラムライブラリ『ABSTRAKT KONKRETE』との併用にも最適です。

6.Soniccoutureが、入魂のサウンドデザインを施した「アブストラクト・ベース・カテゴリー」
…こちらも「VARI-AMP sampling」技術に並ぶ、ハイテックなデザインが施されたカテゴリー。現代の技術を結集し、従来のシンセ・ベースサウンドには無い、新鮮なサウンドデザインを心がけて作られたサウンド達。『ABSTRAKT KONKRETE』を気に入られた方には説明不要ですが、”音の良さ”に加えて、”弾き心地の良さ”も配慮された逸品です。そう貴方のイマジネーションを刺激して、新しい”ベースライン”を引き出します。

7.アンビエントにも最適な「ドローン&エフェクト・カテゴリー」
…遠くから聞こえる”低音の唸り”、グチャグチャとのた打ち回る低音塊を始め、アンビエントや映画音楽に最適な低音テクスチャーを収録。また、これらサウンドは、他のカテゴリーのベースサウンドに対し、奥行きを持ったサウンドとしてレイヤーさせるのにも適しています。

…以上駆け足で、全体の内容に触れてみました。

実際色々と聴いてみると、同社はFS1Rなどの最近のシンセサイザーを得意とする印象があったのですが、”EMS Synthi AKS”や”TX81Z”などのマニアックな機材を使った音色が、特に素晴らしいと感じる出来で、シンセマニアとしての深さも実感させられました。また、シンセベースで重要なフィルター系エンベロープの出来の良さが格別。ツマミを操作してファンキーなフレーズ作りも楽勝でしょう。その他では、時代を意識してかSAW〜SUPER SAW系の音色の充実や、レゲエ/ダブを意識した音色が印象深かったです。トリッキーなテクニックも駆使しながら、過度な音響アプローチに走らないバランス感覚を持った、本当に使えるサウンドデザイン。お値段16,800円と、「費用対効果」も良い超オススメの一枚。ちなみにリリースは今週末29日を予定しております。

さて、まだまだ語りつくせない内容紹介は、明日に続きます。次点では、デモソングを交え、対応ジャンル/スタイルを掘り下げてみたいと思います。